2022年08月02日

純粋経験


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純粋経験



”たとえば、目の中に入れても痛くない孫のようにです、
、、、今まで愛らしく話したり、歌ったり、遊んだりし
た者が、たちまち消えて壷の中の白骨になるとしたら、
人生ほどつまらぬものはありません。
もしそれでも生き抜かねばならぬとしたら、その理由とは
何であるのか??”
というのが西田幾多郎の哲学(善の研究)の出発点で
した。
高校生だった頃の僕にはむろん可愛い孫などあるはずも
ありませんが、でも、
”人生ほどつまらぬものはない。もしそれでも生き抜かな
ければならぬとしたら”
というような悩みの真っただ中にありました。
それが僕をあの難解極まる書物に向かわせたのでしょう。
物狂いと言ってもいい挑戦でした。だって、読んでも
読んでも一行目から先に進めないのですから。
わからないなりに、あれやこれやと思い巡らせながら、一
週間ほど、たった一行の文章を何百回となく読み返しまし
た。すると不思議なもので、一行目の文意がするりとばか
りに解け、次は二行目三行目、そして一ページと読解でき
たのです。それが哲学的なものとの最初の邂逅でした。
どうしてそんなに難しかったのかといえば、言葉にできな
いものを言葉にするしかなかったからでしょう。
生き抜く上で最も大切なものは言葉に馴染まないのでしょ
うか。きっとそうだ思います。
「純粋経験」、、、、
この世にあるものはなんであれ、疑おうと思えばいくらで
も疑うことができます。
もしその中にあって疑えないものがあるとすれば、、、
それを西田幾多郎は「純粋経験」という四文字に託しまし
た。そしてその時の僕はなぜだかその四文字の持つ寓意み
たいなものに強く惹かれたのです。
たとえば、生まれてすぐの頃に見た色や、聞いた音という
原初的な記憶が誰にだってあると思います。それらは成長
するにしたがってみた色や聞いた音とは全く異なるもので
す。どこらあたりが違うかというと、そこには比較とか対
照とかいうものが全くないという点です。○○のようだと
いうたとえもなしです。
それではそこには複雑な体系というものがないのかといえ
ば、そうではなくて、そこにこそ複雑なものの高度な統一
があるのだと考えました。
もっと正確にいえば高度な統一への強い意志が働いている。
そしてその意志が自由闊達に働いていく中で、
人は宇宙的なものに近づいていくのではないかと考えたの
です。その宇宙的なものをある人は神と捉え、またある人
は善となしました。宇宙とは果てしのないものですから、
宇宙的とは非物質的なものを含み、生死も超えています。
科学はなぜ再現性・有用性・予測可能性・合理性を欲する
のでしょうか。それは「失敗したくない」からです。
あるいは「負けたくないから」であり、貧困階級とか人生
の落伍者になりたくないからです。ただそれだけの理由だ
としたら、こんなにつまらないことはありません。
不確実な未来をできるだけ回避したいという心理がそこに
は働いています。それはだからいつも「純粋経験」から
遠ざかっていきます。学べば学ぶほど不自由になっていく
人が多いのはそのためでしょう。人間らしさを失っていく
のもそのためでしょう。性善説と無縁になっていくのもその
ためでしょう。それだけで七転八倒して、そして死を迎えま
す。死後の世界ほど不確実なものはありません。だから恐怖
にとらわれます。未来志向の強い人ほど絶望感の虜となり
ます。
それが私たちが現に生きている世界であり、僕自身がジタバ
タと生きてきた世界です。
たいていの人は何らかの願望を持って生きます。でもその願
望は死という名の目的地で否応なく途切れます。つまりそこ
には何もありません。であれば、、、
人の願望とは何かといえば、二つに一つになります。
一、願望とは、到着することではなくて途中であることで、
常に新たな途上である、ということでしょう。
二、さらに、願望とは、その願望の向こうに、目的の先にあ
る何ものかを見て生きることということになります。
それを西田幾多郎は「純粋経験」といい、またスペンサーの
形而上学的用語でいえば、不可知的な実在( Unknown
Reality )」ということになるのでしょう。




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Posted by 熊本の結婚相談所むつみ会 at 10:14│Comments(0)人生観アカデミー
 
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