2013年09月03日

故郷を忘れた子どもたち・6

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故郷を忘れた子供たち



No.06




博多の親戚宅にもよく遊びにいった。西新の夜の繁華街はきらび
やかで色とりどりの灯火があふれていた。わくわくした。

原生の山野に人家が仮寓したような村落である『山田』はそれとは
まさしく対極にある。一日の終わりは、夜のとばりが落ちるという表
現そのもの。


どちらが好きだったかって・・・?それはちょっと答えかねるが、記憶
に残るという意味では文句なしに後者だ。兄もそういってた。



今ではホタルは、ムラや町おこしの恰好のネタになっている。真っ
暗のなかで微かに点滅するホタルのあかり、、、

それは不夜城のさなかで暮らす現代人にとっては、まるで異界
の出来事のようだろう。

だがあの時代はそれが当たり前だった。街灯はなかったが、ホタルは
身近な夏の風物詩で、蚊帳の中まで入ってきた。



『山田』の家の裏山は夜ともなると、昼の表情を一変させ、夜陰の
黒い巨大な塊と化す。

五右衛門風呂が母屋からひとりぽつんと離れて、夜の谷間にうず
くまっている。



ランプの灯影さえない、手探りしながらの入浴はおさない子どもに
とっては、どきつくような体験だった。

夜が深くなるにつれ、裏山に無数の生き物たちがめざめる。息遣い
が伝わってくる。

子どもの想像がふくらんでいく。その大きさで圧しつぶされそうになる。



なにせ十歩も歩けば、「結界」をまたいでそこは異生物のうごめく世界
だ。見えないからこそ、視線も心も釘付けになり、増幅してゆく。

洗い終えると、身体もろくに拭かないまま、服をかかえて、一目散に母
屋に逃げ帰った。



そうだ思い出した。滞在中に一度,村の鎮守の社に巡回映画がやって
きた。うん、嵐寛十郎の鞍馬天狗だったかな?

結構な距離の夜道である。ばあちゃんが提灯をさげている。足元がうっ
すらと照らされている。



車も通らない石ころだらけの村道、馬や牛の糞も落ちている。月が雲に
隠れると何も見えない。提灯のろうそく1本が頼りだ。

社に近づくにつれ、あちらの坂道からひとつ、こちらの山陰からひとつ、
三々五々と提灯が現れてくる。それが一かたまりになる頃、前方に
映画会場の裸電球のあかりと、ざわめく人影が見えてくる。



映画が終わると帰りは、フィルムの逆回しのようになる。かたまりだった
提灯の灯かりがひとつ離れ、二つ別れて、
村人らはそれぞれの家路を辿るのだ。



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Posted by 熊本の結婚相談所むつみ会 at 12:38Comments(0)思い出

2013年08月22日

故郷を忘れた子どもたち・5


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故郷を忘れた子供たちNo.05




渓流を渡りきると、対岸の100坪余の細長い地面に、古ぼけた長方形
の木造の二階建てがたっている。

家全体が土台から傾いている。屹立というには程遠く、自然崩壊を待つ
ばかりといった、なんかひらきなおったような佇みを見せていた。



後背地は小さな山とはいえ、鬱々たる原生林である。自然の一部と化し
て、息づいているかのような、そんな気配がつよい。

前方の風景を見渡しても、やはり同じような原生林の連なりであり、人家
が自然の中に間借りしている。

薪には絶対事欠く事はない。
炊飯はかまどに薪をくべ、五右衛門風呂ももちろん薪で沸かす。



家人は5,6人もいたろうか、みな怖いくらい寡黙な大人たちである。朝から
晩までただ黙々と働き、野良から戻ると、箱膳を出し黙々と食らう。

5歳のガキの機嫌をとろうとするものなど独りもいない。こっちだって無理し
て機嫌をとってもらおうなんて思いもしない。

そんな関係がさばさばして、かえって心地よかった。



そんなふうであるから、昼間は一日中ほったらかしだ。しかしさびしいともこ
わいとも思わなかった。退屈したかって??とんでもない。

納屋の馬と牛のしぐさや表情をあくこともなく眺めたり、渓流に笹舟を浮かべ
たりと、ゆたかな時間がすぎてゆく。




娯楽なんて買い与えるものではない。与えられた遊びになれてしまうと、何を
やっても退屈する。

子どもは発見と独創の天才であることを忘れてはならない。すべての学びは
そういったものを基盤として成り立つのだと、僕は思っている。



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Posted by 熊本の結婚相談所むつみ会 at 11:43Comments(0)思い出

2013年08月21日

故郷を失った子供たち・4


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故郷を忘れた子供たちNo.04





4km続く虹の松原の頭頂部に、当時の東唐津駅はあった。風光明媚に
して、情緒ゆたかな終着駅である。

『山田』にいくときはそこから汽車に乗る。『山田』というのは義祖母の実家
がある、草生す正真正銘の田舎の地名である。



まずは長い年輪を思わせる枝振りの,松の木の群生の中を、ひた走り、虹
の松原駅に停車する。誰も降りないし、乗らない。

人の気配がない不思議な駅・・・・僕はなぜかこの駅が大好きだった。森の
中の透明な動物たちのための駅。ジプリじゃないが僕たちの子ども時代

(昭和20年代)の遊びのすぐとなりには、動物たちの世界が息づいていた。
いろんな姿かたちのトトロがいたのだ。



虹の松原駅からわずか三駅目が目的地である。その短い旅を、皿を舐め
るようにして、貪欲に満喫しようとする。

ながれゆく窓外の景色をながめる。そこにはくっきりと季節があった。まだ
着くなとこころで念じ続ける。



目的駅である浜崎につく。駅前に街があるわけでもない。人家がぱらぱらと
散在している風情。バスに乗ったおぼえがないからバスも通っていない。

5歳くらいの僕はばあちゃんのてのひらをきついくらいににぎって歩く。
人っ子一人通らないで山あいのでこぼこ道を・・・。

そうだな1時間じゃきかなかった。途中で道端の石に腰掛けて休んだ。



『山田』の家は道から渓流で隔てられて、小山のすそにへばりついている。
驚いたのは渓流に橋はもちろん、渡し板さえなかったことである。

自然石伝いに渓流をわたって、家のある向こう岸にたどり着く。最初はどき
どきしながら渡った。こどもの脚では思い切り跳ばなければならない
間あいもあったのだ。



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Posted by 熊本の結婚相談所むつみ会 at 10:35Comments(3)思い出