2014年01月03日
一月のテネシーワルツ・1



一月のテネシーワルツ

去年の夏、陽も暮れようかなという頃、長兄から携帯に突然電話があった。
「おう、なんね?」
「今(唐津の)虹の松原におっとたい。家族できとる。孫たちも一緒バッテン
、今一人でビールば呑んどる」
「ひとりで・・・?」
「うん、ひとりでたい、砂浜のあすこでな」
「うん・・・・・・・そうか・・・・泣きとうならんね」
「うん・・・・なんか涙ンでてきた」
「あすこ・・・」、で話は通じる。あすこはあすこ、僕たち4人兄弟姉妹にとって
あすこは一箇所しかないのだ。大切な追憶は風景とともにある。
戦後、上海から引き揚げてきた父は、母の故郷唐津で、製麺業を立ち上げ
成功した。当時唐津の町で三階建ての建築物といえば、バスターミナルと
我が家だけだったくらいだ。
しかし僕が小学校に入学する直前倒産した。姉が中学3年、兄が小学校5
年と4年のときだった。
夏が過ぎたころ、大きな自宅が差し押さえられ、一家は親類が経営するシー
ズンオフのがらんとした海の家を仮の宿とした。
家の前には紺青の玄界灘と、4kmつづく白砂青松の弓なりの海岸が広が
っていた。
生活は暗転し、食うや食わずの日々が待っていた。父は仕事を求めて熊本
(父の故郷)へ行った。
しかし高度経済成長時代はまだ遠い時代、そう簡単に生活の糧が得られる
わけがない。行ったきり音沙汰がない。
業を煮やして母も父を後を追った。そして僕たち兄弟姉妹4人が取り残された。
(つづく)
熊本のお見合い、熊本の結婚相談なら
むつみ会結婚相談室(野田成治、野田由美子)

Posted by 熊本の結婚相談所むつみ会 at 12:35│Comments(0)
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