2020年07月31日
人間失格・ 生きてる値打ちもない
人間失格・・・
生きてる値打ちもない
先日「ヒゲ爺さん」が死んだ。朝起きた時には冷たく
なってたらしい。家族はいない。孤独死だ。
幸い発見は早かった。
それ以前には小さなお店をやってたバアチャンが亡く
なった。やっぱり孤独死だ。葬式は省略、直葬、
つまり焼くだけだ。
焼いたってお骨を納めるところは
あるのやら、ないのやら、
線香を手向けてくれる人の一人も
あるのやら、ないのやら
｀｀
二人とも時々言葉を交わす仲だった。
過去は一切知らない。
無欲恬淡な爺さん婆さんだった。
ひっそりと生きてるから目立たないけど、それでも独
居老人が随分目についてきた。
いつも見る姿がないとやっぱり気になる。
僕はといえば今年で七十一歳だが、独居とは程遠い
というか、六歳と三歳の可愛い孫とパパ、ママ、妻とに
囲まれて、賑やか過ぎるくらいの毎日を過ごしている。
｀｀
亡き母が寝たっきりになったころ、病院や施設は
介護度４や５の高齢者でいつもひしめいていた。
食事時になると介護士さんや、見舞いの家族で賑わう。
もちろん肉親としては、どんなカタチであろうと長生き
してほしいという気持ちに一片の嘘偽りもない。
しかし人というものは一皮むくと無残なものでもある。
ツーツーツーと、どこかで、
受話器がはずれたような無愛想な電子音が鳴っているのだ。
それがボソッとつぶやく・・・・
生きてる値打ちもない。
そんなもの誰が決めるんだろう、
誰に決められるんだろう？
老いさらばえてしかばね同然の身でも、
人様に胸を張って言えないような、索漠たる人生しか知
らない身であったとしても・・・・・。
｀｀
昔、阿久悠作詞になる、ある歌が流行った。
「懺悔（ざんげ）の値打ちもない」という。
四番の最後の詞はこうだ。
そうしてこうして暗い夜、
年（齢）も忘れた今日のこと
街にゆらゆら灯りつき
みんな祈りをするときに
懺悔の値打ちもないけれど
私は話してみたかった
生きてる値打ちもないなんて
懺悔の値打ちもないなんて
そんな言葉、誰が誰に対していうのだろう？
人々があなたに対して？
あなたが人々に対して？
それともあなたがあなたに対して？
僕にはなぜか太宰治の生き方がわかるような気がする。
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